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「働く女性が通いやすい不妊治療クリニックをつくりたい。」
その想いから始まった、にしたんARTクリニック。
当院運営代表の西村が大切にしているのは、医療技術だけではなく、「患者さまの立場で考えること」です。
その理念は、診療時間や立地、カウンセラー制度といった仕組みだけでなく、日々患者さまと向き合うスタッフ一人ひとりの行動にも息づいています。
にしたんARTクリニックが目指すのは、単に不妊治療を提供することではありません。患者さま一人ひとりに寄り添い、安心して治療に臨める環境を日本全国へ広げていくことです。
本記事では、西村自身の不妊治療経験や、にしたんARTクリニック設立に至る経緯、そして「人に寄り添う医療」に込めた想いを紹介します。
プロフィール
西村誠司(にしむら せいじ)
エクスコムグローバル株式会社 代表取締役社長。海外Wi-Fiレンタルサービス「イモトのWiFi」、美容内科「にしたんクリニック」、コロナ禍におけるPCR検査事業など、時代のニーズに応える事業を数多く展開。2022年には不妊治療専門の「にしたんARTクリニック」を開院。2026年7月現在、全国に13院を展開しており、今後もさらなる開院を予定している。
聞き手:この分野に挑戦しようと思われたきっかけを教えてください。
西村:きっかけは、私自身の経験なんです。
2010年にアメリカでも事業に挑戦したいと思い、家族で渡米しました。現地では11年間、通信事業を行っていました。
当時、私は44歳、妻は41歳。自然妊娠が難しい年齢になっていたこともあり、アメリカで不妊治療を受けることを決めました。
現地で調べてみると、染色体を事前に調べる着床前検査など、自由診療だと選択肢が多いことが分かったんです。
実際に受精卵を調べたところ、12個のうち異常のない受精卵は1個だけでした。その1個を移植した結果、一度で娘を授かることができました。
日本でも、年齢を重ねてもなかなか妊娠しない方の大きな要因の一つが染色体異常です。もし当時の日本のように受精卵の見た目やグレードだけで選んでいたら、私は何度も移植を繰り返していたと思います。
よく例え話をするんですが、12個のボールが入った箱の中に、当たりが1つだけあるとします。それを見えないまま引き当てるのは本当に難しい。でも、どれが当たりか分かった状態なら、一度で選べますよね。
私にとって、不妊治療は娘に出会わせてくれた医療なんです。

聞き手:ご自身の不妊治療経験が、にしたんARTクリニック設立につながったのでしょうか。
西村:そうです。やっぱり娘に出会えたことが本当に嬉しくて。ずっとその感謝の気持ちって忘れてなくて。日本に帰ってくる時も、その時に治療をしてくれた先生のところに行って、「本当にありがとうございました」とお礼を伝えにいきました。
もう一つ大きかったのが、3歳下の弟夫婦も不妊治療を続けていたことです。
弟夫婦は子どもを授かることができず、今も夫婦二人で暮らしています。
私は娘を授かることができましたが、その一方で、弟夫婦の悔しさも間近で見てきました。
その二つの経験が重なって、日本へ帰ることが決まった時、「アメリカと同じような先進医療を日本でも提供したい」と思うようになったんです。
さらに感じたのが、働く女性が通いやすい不妊治療クリニックが少ないということでした。
だったら自分が理想のクリニックをつくろう。そして今度は、自分が「ありがとう」と言っていただける側になれたらいい。
その思いが、にしたんARTクリニックのスタートでした。
聞き手:にしたんARTクリニックは遅くまで診療していますが、どうしてそうされたのですか?
西村:これだけ女性活躍が叫ばれている時代なので、企業も女性管理職を増やそうとか、女性が働きやすい環境をつくろうとしています。
でも一方で、一般的な不妊治療クリニックを見ると、平日は18時までの診療で、土日は午前中だけで、祝日は休診というところが多いんです。
それについて「これで本当に仕事をしながら通えるのかな」と思っていました。
2021年に帰国して1年間準備を進め、2022年6月に新宿へ最初のクリニックを開院しました。立ち上げの時、院長や看護師をはじめスタートメンバーに「診療時間をどうしようか」と聞いてみたんです。すると、普通に「9時から18時でいきましょう」という答えが返ってきました。もちろん皆、悪気があるわけではありません。医療従事者としては、それが当たり前だったのです。
そこで私は「この近くには伊勢丹がありますよね。夜20時まで営業して、締め作業をする。そこで働いている女性はどうやって通うの?」と聞きましたが、みんなポカーンとしているんです。
だから私は「夜遅くまで働いている方でも通えるように、平日は夜22時までやるよ」っていう話をしました。
何も特別なことはやっていないんです。患者さまの立場で考えれば、それが自然だと思ったのです。
聞き手:他にもこだわっていることはありますか?
西村:はい。クリニックはできるだけ駅直結、あるいは駅から近い場所に出しています。
不妊治療は一度や二度の通院では終わりません。
最低でも10回以上通院される方も多いので、雨の日でも暑い日でも、通いやすいことはすごく大切なのです。
例えば日本橋院は日本橋高島屋の中にあります。検査結果が出るまで待ち時間があっても、その時間を買い物や食事に使える。
院内にはWi-Fiや仕事ができるスペースも用意しています。
働く女性が少しでも通いやすいように「患者さまの立場で考えたら、その方がいい。」
そう思ったことを、一つひとつ形にしてきました。
私たちが取り組んでいるのは、少子高齢化という日本の大きな課題に向き合う仕事です。
だからこそ、民間の立場から、この国を少しでも良くしていきたいという思いで取り組んでいます。
聞き手:診療時間や立地だけではなく、診療体制そのものにも患者さま目線が徹底されていますね。特に印象的だったのが、カウンセラーが治療開始から卒業まで伴走する体制です。
西村:初回のカウンセリングでは、1時間ほど時間をかけて、ご夫婦の希望や悩みをしっかり伺います。そして、その後も卒業までカウンセラーが併走します。
なぜそこまでやるかというと、診察時間にはどうしても限りがあるからです。
医師も患者さまが多ければ、診療を進めなければいけません。そうすると、患者さまが聞きたいことを聞けずに診察が終わってしまうこともあるんです。だからカウンセラーが患者さまの表情や様子を見ながら、「何か気になることはありませんか」と声をかけます。
すると、「実は先生には聞けなかったことがあるんです」とお話しくださる方が少なくありません。その内容はすぐに医師や看護師へ共有し、必要があればもう一度診察を受けていただくこともあります。
聞き手:診察以外のフォローもかなり手厚いですね。
西村:そうですね。
もちろん医師も人ですから、悪気はなくても患者さまを傷つけてしまう言葉があるかもしれません。
そんな時も、カウンセラーが患者さまの表情の変化に気付き、別室でゆっくりお話を伺います。
私は、これもチーム医療だと思っています。
さらに、患者さまとはLINEでもつながっています。
帰宅してから「聞き忘れた」「説明を聞いたけれど理解が追いつかなかった」ということはよくあります。
そうした時にLINEで質問していただければ、お答えできる体制を整えています。
これも患者さまの立場で考えれば、その方が安心できると思うんです。
聞き手:患者さま目線というお話が何度も出てきますが、それは開院当初から変わらない考え方だったのでしょうか。
西村:開院した当初は、「高度な医療技術を提供すること」が一番大切だと思っていました。
でも、1年間クリニックを運営して、患者さまからいただいた喜びの声や苦言を見ているうちに、医療技術が低いからクレームになるとか、逆に医療技術が高いからお褒めいただくといったことは極めて少ないなと気づいたんです。
それよりも、「時間どおりに診察してくれなかった。」「先生が自分たちの意見を全然聞いてくれない。」「上から目線のことを言われた。」といった、治療の中身というよりは、接遇面や態度に関するご意見が多かったんです。
その時に思いました。医療技術はもちろん大切ですが、それ以上に、患者さまに寄り添う姿勢や安心して通っていただける環境づくりが大切なんだと。
だから私たちは、「患者さまの目線より少し低い目線で接する」くらいの気持ちで、日々診療にあたっています。
不妊治療は、パートナーにも職場にも相談できず、一人で悩みを抱えている方が本当に多い医療です。だからこそ、少しでも安心して通っていただけるクリニックでありたいと思っています。
聞き手:西村さんご自身もアメリカで着床前検査を経験されていますが、日本では長く限られた条件でしか受けられませんでした。この制度については、どのように考えていますか。
西村:法律で禁止されていたわけではありません。
日本産科婦人科学会のガイドラインや倫理委員会など、さまざまな運用があって、受けられる方が限られていました。私は、それが患者さまにとって不利益になっている部分もあるんじゃないかと感じていました。
流産の原因の約7割は染色体異常によるものだという報告があります。女性が一番つらいのは、せっかく授かった命を失ってしまうことだと思うんです。実は、長女を授かった時、私は日本へ出張中でした。
その時、妻から「大量に出血した」「流産したかもしれない」と泣きながら電話がかかってきたんです。
幸い流産ではなかったんですが、その時に妻が何度も「パパ、ごめん」と謝ってきたことが、今でも忘れられません。でも、それは妻のせいじゃないんです。
着床しなかったり流産したりすると、多くの女性は「自分のせいかもしれない」と自分を責めてしまいます。だけど実際には、染色体異常など、自分ではどうすることもできない理由であることも少なくありません。
その経験が、「日本でも着床前検査をもっと受けられる環境をつくりたい」と思った大きな理由の一つです。
聞き手:現在は適応条件も見直され、以前より受けられる方が増えてきました。制度の変化については、どのように受け止めていますか。
西村:一歩前進したと思っています。
35歳以上など一定の条件を満たせば、希望する方が受けられるようになってきました。ただ、まだ課題もあります。例えば、着床前検査は混合診療が認められていません。
そのため、着床前検査を受ける場合は、その治療だけではなく、不妊治療全体が自由診療になります。患者さまにとっては、経済的な負担がとても大きくなるんです。理想は、将来的に混合診療、あるいは保険適用が実現することです。
聞き手:着床前検査の意義について、改めて教えてください。
西村:私はよく例え話をするんですが、箱の中に10個のボールが入っていて、そのうち1個だけが赤玉だとします。目隠しをして選ぶのと、どれが赤玉か分かった状態で選ぶのとでは、結果は大きく違いますよね。もちろん100%ではありません。でも、患者さまの身体的、精神的、経済的な負担を減らせる可能性がある医療だと思っています。
日本へ戻ってクリニックを始めた時も、「何度も結果が出ず、心もお金も消耗してしまうご夫婦を少しでも減らしたい」という思いがありました。制度も少しずつ前へ進んでいます。これからも、一人でも多くの方が必要な医療を受けられる環境になってほしいと思っています。
聞き手:にしたんARTクリニックは開院から短期間で全国へ展開されています。
今後もさらに拡大していく予定なのでしょうか。
西村:はい。
きっかけの一つは、数年前に読んだ新聞記事でした。
地方では高度な不妊治療を受けられる施設が少なく、新幹線で東京まで通院している方がいるという内容でした。郡山のような都市でも十分な医療を受けられないのであれば、日本全国にはもっと困っている方がいるはずです。
その時に、「これは医療インフラとして整備しなければいけない」と強く思いました。人口の多い都市を書き出していくと、およそ80都市になります。最終的にはそのくらいの規模まで展開したいと考えています。
私たちが目指しているのは、単にクリニックを増やすことではありません。働く女性が通いやすく、夜遅くまで診療し、土日も診療する。そして心の通った医療を提供する。そうしたクリニックを、日本全国の医療インフラとして整備したいと思っています。
聞き手:現在も新しいクリニックの開院が続いています。
西村:2026年6月には、名古屋・栄に新しいクリニックを開院しました。名古屋駅前院も多くの患者さまに通っていただいていますが、より多くの方を受け入れられるよう、新たな拠点を設けました。
さらに新宿西口には、これまでで最大規模となる新しいクリニックを開院予定です。
ここでは男性不妊治療にもさらに力を入れ、TESE(精巣内精子採取術)など、高度な治療にも対応できる体制を整えていきます。これまでは大学病院をご紹介することもありましたが、できるだけ当院で完結できる医療を提供したいと考えています。
今後は札幌をはじめ、さらに全国へ展開していく予定です。どこに住んでいても、必要な時に高度な不妊治療を受けられる。そんな環境をつくることが、私たちの目標です。
聞き手:最後に、これからのにしたんARTクリニック、そして一緒に働くスタッフへ伝えたいことを教えてください。
西村:私は、人に優しい人が好きなんです。人のために一生懸命頑張っている人が好きなんです。社員にもよく話しているんですが、真面目に一生懸命働く人からしか生まれない輝きや美しさがあると思っています。私は、それが人として一番魅力的な姿だと思うんです。
AIが進化して、世の中がどんどん便利になっていく時代ですが、人が人に寄り添う価値は変わりません。家族の温かさだったり、誰かのために力を尽くそうとする気持ちだったり。そういうものは、これからも人にしか生み出せない価値だと思っています。
不妊治療も同じです。
医療技術はもちろん大切ですが、それだけではありません。患者さまが「ここへ通って良かった」と思えること。家族でもない私たちが、本気で自分たちのことを考えてくれたと感じてもらえること。そういう医療を提供していきたいと思っています。
社員・従業員一人ひとりが、その想いを持って患者さまと向き合うことで、日本で悩んでいるご夫婦を一組でも多く支えていける。私は、そんな組織をこれからもみんなでつくっていきたいと思っています。
聞き手:本日は貴重なお話をありがとうございました。
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